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保育園の加配保育士とは?障害児保育の役割・仕事・補助金を解説

2020.03.18
加配保育士という言葉はご存知でしょうか。加配保育士とは主に障害児保育を実施している保育園に在籍しています。本記事では加配という言葉の意味、加配保育士になるために必要な資格や加配保育士の仕事内容、加配が認められる基準、補助金制度について詳しく解説します。
加配とは生まれつきの発達障害などにより、他の児童と同じように保育園生活を送ることが難しい児童に対して、必要な配慮を加え生活を支えることを指します。つまり一般的な児童以上に気を配ることを、加えるという字を使用し加配と呼びます。そして加配を行う保育士を加配保育士といいます。

加配保育士は規定の保育士の人数にプラスして配置されます。担任保育士プラス加配保育士という配置です。

一見、担任保育士と補助保育士のように見えますが、加配保育士は一般の保育士とは異なる役割を担っています。障害を持つ児童が、保育園生活を支障なく過ごすことができるようにするための手助けをするという役割をしているのです。

障害の種類や度合いは児童によりさまざまで、一般的な保育士以上に児童1人1人に対し寄り添った保育を必要とされるのが加配保育士です。一般の保育士とは異なる仕事内容もあり、また専門的な知識も求められます。
加配保育士は加配が必要とされる児童の保育園生活を、支障なく送ることができるように手助けする保育士です。

保育園は子供たちが集団生活を送っています。中には障害を持つ児童もおり、障害の度合いはそれぞれです。障害を持っていても支援制度がしっかりと整っていれば、集団生活を送ることは十分に可能です。

しかし、他の児童と同じように保育園での活動をすべて行うことは難しいでしょう。加配保育士は、そういった障害のある子どもに寄り添った手助けを行うことが大きな役割です。また、一般の保育士が障害のある児童に手助けを続けていると、他の児童への保育が滞ることもあります。そのような状況を防ぐためにも加配保育士が必要とされています。
加配は障害のある児童に対して行われるものです。障害にもさまざまなものがあり、対象となる障害に関しては特に規定はされていません。例えば、知的障害がある3歳の児童がいたとして、同じ3歳であっても他の3歳児の児童よりも理解度が低く、クラスの生活の流れについていけないなどの場合には加配が行われます。具体的な対象児童の一例を以下に記載します。

・医師により自閉症の診断があり療育手帳を持つ子
・ADHD(注意欠陥多動性障害)の診断があり療育手帳を持つ子
・療育手帳はなく、保護者は認めていないが明らかに他の児童よりも情緒面で不安定かつ集団生活が難しく、目が離せない子
加配保育士が行う保育の仕事について解説します。
加配保育士は障害を持つ児童の担当となります。障害を持つ児童は他の児童以上に細やかなサポートが必要ですが、同じ障害であっても児童により様子や援助の方法が異なります。加配保育士は児童が持つ障害や発達を把握することから始めていきます。

児童の障害や発達など様子を把握した上で食事や排せつ、衣服の着脱など身の回りのことをサポートし、遊びの中で他の児童との関わりや集団活動での手助けを行います。

障害を持つ児童に合わせて、寄り添うことも、加配保育士の大切な仕事となります。できること、できないことが顕著に表れやすい児童に対し、児童自身が自分はできないからと諦めさせることがないよう、成長の過程に合わせ丁寧に対応し手助けを行っていきます。そのため細やかな支援を必要とする児童のサポートがメインの仕事となります。
統合保育を行っている保育園は、障害を持つ児童も一般の児童も一緒に保育を行っています。加配保育士は障害のある児童のサポートだけではなく、他の児童との間に立つという仕事もあります。

例えば、ダウン症など知的障害を持つ児童に対しては遊びや生活の中で、社会性や協調性を学ぶことができるように関わりサポートを行います。自我が強く頑固な児童の場合には周りの児童とトラブルになりやすいため、仲立ちをするといったことも行います。

また、障害により歩行困難な児童がいる場合には、周りの児童との接触を避けるような配慮も行います。
加配保育士は担当する児童のカリキュラムも作成します。保育園では、月次や週次でのカリキュラムやクラスごとに保育目標などの設定があります。しかし障害を持つ児童は、その目標やカリキュラムを達成できないことも少なくありません。そのため、担当児童に合った個別のカリキュラムを作成します。

障害や発達に適したカリキュラムを設定することで、障害を持つ児童の保育園生活もより充実して送ることができるようになります。
保育園は集団生活のため、加配保育士は担当する児童が集団活動にスムーズに参加できるようサポートを行います。声掛けなどもその1つですが声掛けを行っても、他の児童と同じような活動ができない児童や1人での活動を好む児童もいます。

そんな場合には無理に集団活動に参加させずに個別の活動を見守るなど、個別対応をすることも加配保育士の仕事の1つです。
加配保育士は、福祉や行政機関の橋渡し役も担います。加配保育士は子どもの福祉支援について、自治体や役所の相談員からアドバイスを受ける、現場の声を報告するなどの役割もあります。

障害児保育を実施している保育園では保健所や保健センター、発達支援センターとの連携を行っていることもあります。また障害児保育専門の職員が自治体からの支援として、各保育園を巡回する場合もあり、このような外部の福祉機関や行政機関との窓口になる役割もあります。指導内容や保育の様子を伝えるために、個人記録の作成なども加配保育士の仕事となります。
加配保育士になるためには保育士資格が必要となります。また、一般的な保育士とは異なる知識や配慮が求められる場面も多々あります。次項では、加配保育士になるために必要な条件について解説します。
加配保育士になるための第一条件として、保育士資格が必要となります。そのほかに必須となる資格はありません。保育士資格を取得するために必要となる知識の中には、障害児保育についての項目も含まれています。保育士の資格を持っているということは、障害児保育についての知識も持っているとみなされます。

加配保育士は一般の保育士にプラスされて配置されるため、保育補助員と混同されることがあります。しかし保育補助員は保育士の資格は必要とされません。
保育士の資格を取得する際に障害児保育について勉強をしていても、全ての障害について理解しているわけではありません。障害の種類、度合いは児童によってもさまざまで、関わり方やサポートの方法もそれぞれ異なります。

加配保育士は主に障害児保育に携わるため、その対応には専門的な知識も必要となります。障害について知識が深い、障害児保育の研修やセミナーなどの受講経験がある方などが望ましいです。

また、加配保育士として働くうえで精神保健福祉士、特別支援学校教諭免許は非常に役立つ資格となります。精神保健福祉士は療育の相談に乗ることができ、障害に対してもより専門的な知識があるという証明となります。特別支援学校教諭免許も同様に、身体的な障害に対する知識も得られます。

専門的な知識を得ている保育士だからこそ、加配保育士として配置されたときに専門的な対応ができるといえます。
障害を持つ児童の保護者は子育てに対してマイナスに考えてしまったり、自信を失ったりすることも少なくありません。加配保育士はそのような保護者の気持ちを汲み取り、良き相談相手として保護者のケアをすることも大切な役割です。

また、障害を認めたくないという保護者の方も少なくはなく、診断を受けないケースもあります。加配保育士は基本的に、障害の診断を受けた児童に対し配置されます。しかし、保育園生活に大きく支障をきたす場合には、グレーゾーンである児童に対し保育園からの申請によって加配保育士が配置される場合もあります。

障害があると認めたくはないが、保育園生活で自分の子どもが周りに迷惑をかけてしまっている状態は、保護者にとってつらい状況となります。このような場合にも加配保育士は保育園での様子や成長を丁寧に保護者に伝え、気持ちに配慮した関わりを持つことが求められます。
加配保育士は障害のある児童に付き添いサポートを行うことが大きな仕事です。同時に一般の児童や、障害のある児童の保護者に対しても細やかな配慮が必要とされる仕事です。次項では加配保育士に向く人について解説します。
加配保育士に向いている人は集団のリーダーシップを取り、ぐいぐいと引っ張っていく保育士よりも、児童一人一人の個性に寄り添う丁寧な保育ができる人が向いています。

一般の児童でも就学前の児童の保育は非常に大変な仕事ですが、加配保育士はさらに大変な仕事です。障害のある児童の個性を受け止め、長所、短所を含めとことん寄り添っていく覚悟が必要です。地道な努力もいとわない人が加配保育士に向いていると言えるでしょう。

担当児童が充実した保育園生活を送ることができるようになれば、これほど喜ばしいことはありません。普通の保育士よりも充実感を得られることは間違いありません。
加配保育士には児童、保護者としっかりとした信頼関係を築くことが求められます。

障害を持つ児童の中には自分の殻に閉じこもってしまう児童もいれば、自分だけをかまってほしいという気持ちから、わざと困らせるようなことをする児童もいます。そのため、いかにして信頼関係を築いていけるかということも、加配保育士に求められる能力となります。

また障害にもさまざまな内容、種類があり、児童によって症状や度合いもさまざまで、加配保育士が障害に対する知識と理解を十分に持っていなければなりません。時には勉強をして知識を深め、保護者や園長、他の保育士と積極的に意見交換をする姿勢も求められます。そのため、児童や保護者の力になりたいという前向きな意欲が必要とされます。
加配保育は障害児保育を実施している保育園で行われることが多く、国は主に2つの補助金を通して加配の支援を行っています。

加配保育は自治体によって呼び名もさまざまで、福岡では障害児保育制度という名称になっています。通常、国による認可保育園は、障害のある児童3名に対して加配保育士を1名設置するよう求められています。しかしあくまでも目安として定められているため、各地方の保育園の状況によって合致しない場合があります。

療育支援加算は加配保育士を雇用するための補助金制度で、障害児保育加算は地域型保育事業の障害児保育を支援するための補助金となります。
療育支援加算は障害児保育を行う園に適用されます。主任保育士が職務に専念できるように加配保育士を雇用する目的で利用される補助金です。

障害児保育には障害を持つ児童、その保護者、他の児童とその保護者などに対し、非常に丁寧なサポートが求められます。主任保育士には学年や園、担任保育士をまとめるなどの役割があるため、障害児保育に専念することができません。そのため加配保育士が配置されれば、主任保育士は現場のリーダーとしての役割を果たすことができるようになります。

障害児保育の質を高めることを目標とし、このような加配にかかる費用を国が補助しているのです。
地域型保育事業は2015年に認可保育事業として創設されました。この地域型保育事業に対し、障害児保育を支援するための補助金が障害児保育加算です。

対象となるのは小規模保育や事業所内保育、家庭的保育において障害児保育を実施する場合にも加配は必要となります。子ども2人につき保育士1人の加配が基準となっています。地域型保育事業は小規模の施設が多い中、このような支援策を利用し障害児保育においても、きめ細やかな対応ができるようにするために取り入れられました。
加配基準の決定は都道府県や市区町村を中心とした自治体ですが、各自治体によって対応が異なるのが現状となっています。障害児保育を地域の全事業所で受け入れている自治体もあれば、公立保育園のみ受け入れとなっている自治体もあります。また、加配保育士が認められる基準も自治体によって異なります。
加配は保護者、または保育園からの申請によって決まることが一般的となっています。申請は医師の診断書、療育センターからの書類、保育園からの書類を元に第三者委員会が審議し、申請が認められると保育所が加配保育士を雇用するための補助金が支給され、加配保育士が配置されます。

また障害の程度や保育園の状況などから段階的なレベルで分けられ、レベルに応じて加配保育士を雇用するための補助金が支給されます。障害の診断は保育園ではなく医師によって行われるため、自分の子どもが保育園に入園する前に保育園に相談し、保育園側が加配保育士の手続きを行います。

加配保育士が必要となっても、職員の数が足りなければ新たに人材を雇用しなければならない場合もあります。そのため加配が必要な園児が在籍予定である、または在籍している保育園が自治体に申請し、補助金を受け取り加配保育士の求人をするのです。
加配できる保育士の人数は、児童の障害の程度や発達の遅れなど専門的な基準から決められます。このような基準を総合的に判断し、障害がある児童4人に対し加配保育士1人の配置となる場合もあれば、児童1~3人に対し加配保育士1人となる場合もあります。
平成29年3月にみずほ情報総研株式会社が発表した「保育所における障害児に関する研究報告書」の中で、加配保育士の配置基準について具体的な基準はないと答えた市町村は42.5%と報告されています。

*参考「保育所における障害児に関する研究報告書」みずほ情報総研株式会社
https://www.mizuho-ir.co.jp/case/research/pdf/kosodate2017_03.pdf

児童の障害の程度を問わず、一律の配置基準を設けている市町村は全体の3割弱、程度によって配置基準を設けている市町村は2割強となっています。

研究報告書の中で障害の程度を問わず基準を設けている市町村の基準例は、障害児3人に対し加配保育士1人、障害児1人に対し加配保育士1人などとなっており、小規模自治体においては半数以上(55.5%)が具体的な基準を設けていません。

また配置された加配保育士は、担当となった児童に対しつきっきりでサポートを行っているわけではない事も、現段階の状況となっています。加配対象となった児童がいるクラスに、加配保育士が入りクラス全体のサポートをするなどの対応をしている場合もあります。

このような対応は保育所の方針によっても変わり、加配保育士の配置をどのようにするかも園の方針によって変わってきます。
公立幼稚園では多くの自治体が加配制度を採用しています、また私立幼稚園でも加配申請をすれば、市町村から特別支援教育のための補助金が支給されます。しかし現状、補助金だけでは加配教諭の雇用をカバーすることができません。そのため加配申請をしても、加配教諭が配置されるかどうかは幼稚園の判断となっています。
国は障害児保育の受け入れ窓口拡大を行うために、保育園に対し財政支援だけではなく2017年から保育士への支援も開始しています。
保育士に対する支援として、保育施設でリーダー的職員を目指すための研修が設けられました。それが「保育士等キャリアアップ研修」です。この研修分野に障害児保育が盛り込まれています。保育士等キャリアアップ研修を受けるために必要な経費の一部は国や自治体から補助を受けることができます。
現代ではさまざまな家庭が保育園を利用し、保育園に求められるものも多様化しています。特に障害児保育の拡充は国が力を入れている分野であり、積極的に補助金などの取り組みも行われています。

そのようなことから「保育士等キャリアアップ研修」の受講が終了し、障害児保育を含めたリーダー的職員になった保育士について、その取り組みに応じた人件費を加算した経費を国や自治体が負担します。
障害児保育を行う保育園は統合保育園と呼ばれています。加配保育士は統合保育を担う重要な仕事といえるでしょう。また、障害を持つ子どもが集団生活を送る場合には、子ども自身も保護者の方も不安や困難を抱えています。そんな子どもと保護者の気持ちに寄り添い、支援を行うのが加配保育士です。

加配保育士のサポートによって集団生活を送ることができるようになると、障害を持つ児童も多くのことが身につき、さまざまなことを学んでいきます。障害を持つ児童の保護者にとっても加配保育がある保育園は非常にありがたい存在といえます。
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