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地域限定保育士とは?試験や受験資格について解説【2020年版】大阪/神奈川

2020.04.22
新たに導入された資格に地域限定保育士という資格があります。この資格は近年社会問題化している、慢性的な保育士不足が関係しています。本記事では地域限定保育士とは従来の保育士とどのように異なるのか、またどのようにしたらなることができるのかについて解説します。
比較的知らない人も多い地域限定保育士とは、保育士の慢性的な不足を解消するために2015年に出来た新しい資格です。地域限定保育士は従来の保育士とは少し異なる特徴があるため、地域限定保育士がどのようなものか解説します。
地域限定保育士とは、国家戦略特別区域の自治体によって行われる試験に合格すると、その地域限定で働くことのできる保育士の資格で、その職務は一般の保育士資格保有者と違いはありません。
昨今保育士の慢性的な不足が深刻化しており、一人でも多くの保育士に働いてほしいというのが国や自治体の願いです。全国的な保育士不足の中でも、特に保育士不足が深刻な地域で働くことを前提とした、保育士を増やすために設けられた資格であり、都市部など特に保育士が不足している地域で待機児童を減らす為に制定された資格です。安倍政権下でダイバーシティ政策を進める上では、待機児童0を目標に公約を掲げています。女性の活躍の場を増やす意味でも地域限定保育士の価値は高いと言えます。
地域限定保育士制度は各自治体の判断で行われるため、すべての都道府県で導入されているわけではありません。開始当時はもう少し多かったのですが、現在この制度を実施しているのは神奈川県と大阪府など一部の自治体のみとなっています。
地域限定保育士の仕事が、その地域に限定されるのかというと実はそうではありません。前提として、地域限定保育士に登録されてから3年間はその地域で働くという縛りは付きますが、その後は他の保育士同様日本全国の保育施設での勤務が可能となります。また、その3年も実務経験が求められるわけではないため、登録後3年経てば地域限定ではなくなるということです。
地域限定保育士と普通の保育士の違いの大きな点は、3年間保育士として働く地域が限定されるか全国で働けるかです。特に保育士不足が深刻化している神奈川県と大阪府はこの制度に力を入れています。

他に異なる点として試験を実施するのが自治体となるため、神奈川県の場合は通常4月と10月に行われる保育士試験とは別に、8月に試験が行われています。大阪府は通常の保育士試験と同じ日程で4月に行われています。試験内容もほぼ普通の保育士試験と変わりませんが、二次試験で多少の差が見られます。
ここからは地域限定保育士の試験内容と受験資格について詳しく解説します。
受験資格については、以下の通りです。こちらは普通の保育士試験の受験資格と同様です。

専門学校、短期大学、大学を卒業している者。
高等学校を卒業しており児童福祉施設において2年以上かつ2,880時間以上児童の保護に従事した経験がある者。
中学校を卒業後、児童福祉施設において5年以上、かつ、7,200時間以上児童の保護に従事した経験がある者。
地域限定保育士は日本全国どの都道府県に在住でも受験可能です。ただし当然試験は、実施する自治体の地域で行われ、合格後も3年間はその地域限定でしか働くことが出来ないため注意が必要です。
・受験申請の手引き配布期間(2019年度実績)
神奈川県:4月上旬から中旬
大阪府:6月下旬から1か月間

・申込時期(2019年度実績)
神奈川県:4月中旬から5月初旬
大阪府:6月下旬から1か月間(受験申請の手引き配布期間と同様)

・手数料
神奈川県:12,700円
大阪府:12,950円
大阪府は2019年の実績です。また通常の保育士試験と同日程で実施されています。
筆記試験:2019年10月19日(土)、20日(日)
実技試験:2019年12月8日(日)
保育実技講習会:2019年11月30日(土)から2020年1月5日(日)のうち5日間
筆記試験:2020年8月15日(土)、8月16日(日)
実技講習会:2020年10月から11月(5日間程度)
神奈川県は通常の保育士試験と別日での試験の為、注意が必要です。
※詳細は神奈川県のホームページで確認してください。
地域限定保育士試験の大まかな流れは普通の保育士試験と違いはありませんが、二次試験の代わりに保育実技講習会があることが大きな違いです。
通常の保育士試験同様8科目を2日間で受験します。試験科目は以下の科目すべてで6割以上の点を取ることで筆記試験通過となります。
・保育原理
・教育原理及び社会的養護
・児童家庭福祉
・社会福祉
・保育の心理学
・子どもの保健
・子どもの食と栄養
・保育実習理論
現在地域保育士試験において実技試験は大阪府のみで行われていますがその内容は、以下の3科目の課題のうち2つを選びます。
・音楽表現に関する技術
・造形表現に関する技術
・言語表現に関する技術

音楽表現に関する技術は、ピアノかギターを弾きながら課題曲となる童謡を歌うというものです。造形表現に関する技術は、課題に沿った場面の絵を色鉛筆で時間内に描くというもので、与えられる課題は「保育園で子ども同士がおもちゃを取り合って仲直りをしている場面」など子どもたちの日常に沿ったものが出題されます。

言語表現に関する技術は、決められた時間内で物語を絵本無しで子どもたちが周りにいるかのように語るというものです。物語は自分で選べるため、得意なもので勝負するという方法をとることができます。

また実技試験の代わりにどちらの自治体も保育実技講習会があり、こちらは受講終了すれば実技試験通過の扱いとなり、合格したことになります。この講習会の内容としては以下の合計27時間(約5日程度)です。
・音楽表現に関する演習(90分×4コマ)
・造形表現に関する演習(90分×4コマ)
・言語表現に関する演習(90分×4コマ)
・保育実践見学実習の事前指導(60分)
・保育実践見学実習(1日)
・保育実践見学実習の事後指導(120分)
普通の保育士も地域限定保育士も試験内容は2次試験に違いがあるだけで、筆記試験の内容は同じのため、難易度も同様です。保育士試験の合格率は全国平均で約20%です。2次試験が講習を選べるという点では地域限定保育士のほうが少し有利です。
筆記試験8科目全てで6割以上の得点というのは、マーク式の解答方式であってもプレッシャーを感じます。筆記試験には科目免除の制度があります。一度の試験で数科目合格点に満たなかったとしても、次またチャレンジするのであれば一度目で合格した科目の合格は持ち越され科目免除となります。

一度合格しておけばその科目の合格は3年間持ち越すことができるため、次にチャレンジするときには科目を絞って勉強することができます。
保育士試験と地域限定保育士試験では、どちらかの試験で合格した科目は両方の試験で科目免除となります。そのため保育士試験は年に2回、神奈川県の試験は時期をずらして年に1度あるため、地域を問わずに保育士になりたい場合は科目免除を最大限に活かしつつ年に3回挑戦することができます。
地域限定保育士試験の筆記については普通の保育士と共通しています。そのため勉強法としては、保育士対策をするのと全く同じです。独学、通学、通信教育と選択肢は多くあるため自分のライフスタイルに合わせた学習法を選んで下さい。いくつかお薦めの教材や、教育機関、サイトをご紹介します。
・成美堂:一番わかりやすい合格テキスト上・下巻
・ユーキャン保育士研究会:ユーキャンの保育士 過去&予想問題集

独学で勉強ができる時間のある方は、こちらの2冊で筆記の範囲をカバーすることができます。合格テキストでしっかり学科内容を把握し、過去問・予想問題で問題形式に慣れることがお薦めの学習法です。
・ライセンス学院
・ヒューマンアカデミーチャイルドケアカレッジ

他にも仕事や家事と両立しながら学べるスクールは多くありますが、通学のメリットはすぐに質問できる体制がありフォローもしっかりしてくれるところです。また志を同じくする仲間と出会えるのもモチベーションを維持するために良い点です。自分の住んでる地域から無理なく通えるところを選んで下さい。
・四谷学院
・ユーキャン

通信教育も数多くありますが実技まで対策しているところや、1科目から対応しているところなど特色がそれぞれあります。自分の必要性や予算に合わせて選んで下さい。その際、質問できるシステムや、添削課題を行っているところのほうが安心です。
ここからは地域限定保育士としての仕事のメリットとデメリットについて解説します。
メリットとしては実施している自治体が自分の望んでいる場所であるならば、合格すぐに働くことができます。元々保育士の需要の高い地域で取り入れられた制度のため、売り手市場の状態なのです。また3年後には普通の保育士同様、全国の保育施設で就労可能なため、生涯その地域に縛られない事もメリットと言えます。
デメリットとしては地域限定がネックとなり、資格取得後に後悔する人もいるといいます。事情があり合格後3年以内に他の地域に引っ越さなければならなくなった時などは、せっかく取得した資格を活かせるようになるまでに3年の縛りが解けるまで待つ必要があります。

そしてもう一つの点として比較的新しい制度であるため、世間的な認知度が低いという点が挙げられます。
地域限定保育士も普通の保育士も向いている人は同じで、子どもの保育に心から向き合い、子どもたちの成長に働く喜びを感じることができる人です。また保護者対応や保育士同士のコミュニケーションも重要なため、コミュニケーション能力も高い人が向いています。
【地域限定保育士とは】
その制度を実施している自治体で3年間保育士として働くことを前提に作られた資格。3年間は地域限定だが、その後は普通の保育士と変わらず全国の保育施設での就労が可能。制度を利用している地方公共団体は特に保育士不足が深刻な地域で、実施する団体は年によって変わることもあるが、大阪府、神奈川県は毎年実施している。

【地域限定保育士の試験と受験資格】
普通の保育士と受験資格、一次試験内容とその合格ライン、難易度は変わらない。

1次試験の科目は以下で、全科目6割が合格ライン。
・保育原理
・教育原理及び社会的養護
・児童家庭福祉
・社会福祉
・保育の心理学
・子どもの保健
・子どもの食と栄養
・保育実習理論

1次試験の科目ごとの合格は最大3年間持ち越すことができ、次回受験の際には科目免除が受けられる。また、科目免除は普通の保育士試験との互換性がある。
大阪では10月、神奈川では8月に一次試験が実施され合格者は、大阪では二次試験か保育実技講習会化を選ぶ一方、神奈川では実習のみが行われる。

【地域限定保育士のメリット・デメリット】
保育士不足の自治体が行う制度のため、合格後すぐに就労可能である一方、保育士としての仕事は3年間その地域に限定される。

【地域限定保育士に向いている人】
子どもの保育に情熱がありその地域に愛着を持てる人。
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