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保育士と幼稚園教諭の違いとは?仕事・資格・給料・制度を比較【2020年最新版】

2020.05.06
大好きな子どもに携わる職業に就きたいと考えた場合、保育士になるべきか、幼稚園教諭になるべきか、迷う方もいらっしゃるはずです。自分の将来を決める選択でもあり、子どもとの携わり方も変わってきます。本記事では保育士と幼稚園教諭の違いを徹底比較し、解説します。
そもそも「保育」とは保護して育成することです。つまり「保育士」とは乳幼児(0歳~未就学児)を育てる人、生活面をサポートする人になります。保育士資格を取得したうえで、保育所などの児童福祉施設で働きます。保育園では朝7時~8時頃に開園、夕方18時~20時頃に閉園するところが多く、フルタイム労働の場合、早番・中番(普通番)・遅番といったシフト制の8時間勤務が一般的です。昼食後にはお昼寝の時間があり、寝かしつけをするという特徴があります。
幼稚園教諭は「幼稚園の先生」と呼ばれるとおり、幼児(満3歳~未就学児)の子どもを預かり、教育するのが仕事です。幼稚園教諭免許状を取得し、幼稚園で働きます。子どもが幼稚園にいる時間帯は朝10時頃~昼14時頃の4時間が一般的。お昼寝の時間はなく、子どもが幼稚園にいない間の準備や事務などを含め、朝8時頃~夕方18時頃の8時間労働が基本です。
保育士と幼稚園教諭、それぞれの概要からもわかるとおり、保育所・保育園と幼稚園には根本的な違いがあります。それは福祉の場か、教育の場かということです。保育園は児童福祉施設なので0歳の乳児から預けることができますが、幼稚園は幼児のための教育施設のため特例を除き満3歳から入園可能という決まりがあります。

満3歳以上の幼児であっても、例えば親が仕事をしていて生活面で支えてほしい場合は保育園に預ける方が適切です。共働きの両親が自身らの勤務時間を考慮しつつ、幼児教育に重きを置くのであれば、幼稚園に通わせることになります。それぞれの施設によって目的も、子どもたちの年齢や在園時間も異なるということです。

さらに保育園の場合は児童福祉法に基づいて認可されている認可保育園か、それとも認可外保育園か、幼稚園の場合は国立・公立・私立といった運営形態の違いもあります。認可保育園に通わせるためには、乳幼児の保育が必要かどうかが判断基準です。

保護者に対する条件が自治体によって定められていますが、幼稚園にはこうした入園条件はなく、定員オーバーでない限りどの幼児でも入園可能です。

また保育園には夏休みや冬休みといった長期休暇がないところが多く、基本的に保育料は保護者の所得などにより違いがあります。幼稚園は学校なので長期休暇があり、教育費は国立・公立・私立による違いはあるものの、おおよそ一律です。

運営形態、入園条件、長期休暇の有無、保育料・教育費の違いは、子どもを通わせる保護者にとって非常に重要な判断基準です。保育士も幼稚園教諭も、こうした点を踏まえたうえで保護者と接する必要があります。
保育園と幼稚園は似ているようでも、実際には異なる点がいくつかある事を前項で解説しました。職場の環境が違うということは、それに伴って働く側にも違いが出てきます。保育士と幼稚園教諭では何が違うのか、管轄や目的、資格や免許について解説します。
子どもの生活を支える保育士と、教育を担う幼稚園教諭。職種によって目的に違いが生じる理由は、それぞれの管轄省庁にあります。保育園は厚生労働省が管轄する児童福祉施設、幼稚園は文部科学省が管轄する幼児教育施設です。厚生労働省と文部科学省、この管轄する行政機関の違いによって福祉と教育という施設の目的、職種ごとの目的も異なります。

保育園に入園してくるのは、保育を必要とする乳幼児ばかりです。保育士は子どもが心身とも健やかに過ごすことができるよう養護に努める必要があります。さらに生活習慣や協調性、道徳心、コミュニケーション能力、表現力の芽生えなどに役立つ環境づくりが目標です。また仕事をしながら子育てをする保護者や地域の関係機関との連携にも留意します。

健康的で安心、安全な子どもの生活が重視される保育士に対して、幼稚園教諭は幼児にふさわしい情操教育を行うことが目的です。生活習慣の形成や食育はもちろん、体を動かしたり言葉や数量を交えて遊んだり、音楽や伝統文化、地域社会との交流などを通じて自立と協同を学べるよう努めます。

まとめると厚生労働省が管轄する保育士は乳幼児の生活という福祉、文部科学省が管轄する幼稚園教諭は幼児の教育が目的です。この管轄と目的の違いを踏まえたうえで、それぞれの職業に就くための方法を確認します。
保育士になるために取得する必要がある保育士資格を管轄している省庁は厚生労働省であり、児童福祉法に基づく福祉分野の国家資格です。幼稚園教諭になるために取得する幼稚園教諭免許状の管轄も、幼稚園という教育施設と同じく文部科学省であり、学校教育法に基づく教員となります。
国家試験である保育士試験を受けるためには専門学校、短期大学、大学、大学院卒業といった資格が必要です。ただ、単位取得の規定を満たしている大学2年以上は見込み受験が可能であり、保育専攻の2年制高校卒業者も受験可能です。そのため社会人や、高校卒業見込みのうちから準備するだけでなく、中学生や高校入学頃から保育士を目指す準備をすることも可能です。

保育士試験は筆記と実技に分かれていて、筆記試験は「保育の心理学」や「保育原理」などの科目ごと、実技試験は音楽・造形・言語の表現技術という3分野から2分野を選んで合格する必要があります。

保育士資格を取得した後は「登録事務処理センター」を通じて「保育士登録」を行い、各都道府県知事から「保育士証」を交付されることにより、実際の勤務が可能になるという流れです。保育士資格と保育士証は更新の必要はありません。保育士試験の合格基準や免除対象を含め、詳細は厚生労働省や登録事務処理センターのホームページをご確認ください。
幼稚園教諭免許状は「専修免許状」「一種免許状」「二種免許状」の3種類がある「普通免許状」と、地域や期間に限りがある「臨時免許状」に分かれています。それぞれに違いありますが、大学や短期大学などで幼稚園教諭になるための教育課程を学び、卒業することが基本的な免許取得方法です。

保育士資格、幼稚園教諭免許状のどちらかを取得していると、もう一方の資格や免許が条件的に取りやすくなります。また幼稚園教諭免許状を含む教員免許は2009年4月から更新制となっている点にも留意が必要です。ご自身の状況や希望と照らし合わせるためにも、詳細は文部科学省のホームページをご覧ください。
結果的に資格と免許の両方を取得するにしても、準備段階から道筋が異なるため、まずはどちらか一方を優先することになるはずです。保育士と幼稚園教諭のどちらを目指すのか、その判断材料となる両者の違いについての理解を深めるため、新たに設けられた制度についても着目します。
2006年10月に保育園と幼稚園の機能を兼ね備え、なおかつ子育て支援を行う施設として「認定こども園制度」が始まりました。内閣総理大臣、厚生労働大臣、文部科学大臣が定めた基準に沿って都道府県知事が条例により認定しています。「幼保連携型」「幼稚園型」「保育所型」「地方裁量型」の4種類があります。
新たな制度が導入されたことにより、以前は保育園や幼稚園だったところが保育所型や幼稚園型の認定こども園に変わるケースも出てきました。子育てと仕事を両立する親にとっては、子どもの保育と教育、子育て支援が一体化され、子どもを預けやすくなっています。ただ、働く側にとっては変更点が多く、柔軟に対応する姿勢が必要です。

保育園と幼稚園ではそもそも目的が違うだけでなく、乳児がいるかいないかといった子どもの年齢や在園時間に伴う具体的な仕事内容が園全体で変わります。あるいは創設から認定こども園としてスタートする幼保連携型や地方裁量型にしても、保育士と幼稚園教諭両方の存在が欠かせません。その結果、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を取得する必要性に迫られる場面も出てきました。

こうした流れを受けて設けられたのが「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」あるいは「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」で、「幼保特例制度」と呼ばれています。保育士の資格と幼稚園教諭の免許状のどちらか一方を持つ場合、期間限定かつ条件つきながらも他方を取得しやすくなります。

保育士か幼稚園教諭の実務経験が3年以上ある場合は該当する可能性がありますので、厚生労働省と文部科学省のホームページをご確認ください。
2019年10月には幼児教育・保育の無償化制度が施行されました。テレビ・新聞などで幼保無償化」と呼ばれている制度です。これにより、子ども・子育て支援新制度の対象となる保育園、幼稚園、認可こども園の利用料が条件つきで無料になっています。詳細については内閣府、厚生労働省、文部科学省のホームページをご参照ください。

この制度が実際に役立つのは乳幼児の子どもがいる世帯です。子どもを預けやすくなるということは、保育士や幼稚園教諭の需要が増えることにもつながります。どちらか、あるいは両方を目指す方にとっても就職先が広がるチャンスです。
「保育士等キャリアアップ研修制度」は2017年4月、厚生労働省によって導入されました。若手や中堅の保育士がこの研修を受けることによって能力を身につけ、リーダー、副主任、主任、園長へとキャリアアップを図ることが狙いです。役職につくと手当てが支給されます。給料が低いと社会問題になりがちな保育士ですが、制度を活用することで道は開けるという点も心に留めておいてください。
乳幼児の保育が目的の保育士と幼児の教育が目的の幼稚園教諭では、実際に行う仕事内容にも違いがあります。子どもの在園時間が長く、基本的にお昼寝の時間がある保育園。こちらでは厚生労働省が定める保育所保育指針に則り、実際に子どもに接して食事やお昼寝、着替えといった健やかに生活するためのサポートを行います。準備や片付け、事務などは時間を見つけて行う必要があり、求められるのは臨機応変さです。

子どもの在園時間が1日あたり約4時間と限られている幼稚園では、その間に文部科学省が定める幼稚園教育要領に沿った指導を行います。体を動かしたり、歌を歌ったり、物を作ったりといった遊びを通じて、心身ともに自立や協同を学ぶことができるようなカリキュラムです。食事など生活にまつわる事柄も教育の一環として行います。準備や片付け、事務などの業務がある点は保育士と同じです。
2020年現在で保育士、幼稚園教諭ともに平均年収は約340万円程度です。これは全職種・20代の平均年収に相当します。月収は約23万円、ボーナスは約64万円です。保育士と幼稚園教諭で比較すると多少、保育士の平均年収の方が高いものの、ほぼ違いはありません。しかし、全職種・全年代の平均年収が約440万円である点を踏まえると、約100万円も低いことがわかります。

もちろん保育士、幼稚園教諭ともに女性比率が高く、年齢層も比較的、若い世代が多い職業です。また認可保育園と認可外保育園、国公立幼稚園と私立幼稚園といった運営形態による給料の違いもあります。こうした点を考慮しても「保育士の給料が低い」と社会問題になっている事実は否めません。

フルタイムで働く母親の増加に伴い、幼稚園の定員割れと保育園の待機児童が増え、保育士の人材不足は進む一方という現象が起きています。若い世代の割合が高い分、離職者も多く、資格を持ちつつ保育園で働かない潜在保育士も増加しています。このような悪循環が起きる原因は給料の低さのほか、長時間に渡り乳幼児の命を預かるという重責、長期間の休みが取りにくい、あるいはシフト制などの勤務形態が挙げられます。

ただ、新たな制度の実施により改善へと向かうはずです。人材不足こそ就職のチャンスという捉え方もできます。保育園・幼稚園ともに利用者が増えつつある点を踏まえ、資格や免許を取る準備をしたいものです。
新たな制度が導入されている状況も踏まえ、保育士と幼稚園教諭の違いについて項目ごとに比較してきました。どちらの仕事がご自身に向いているのか、希望する条件と合致するのはどちらの職業なのか、少しずつ明確になってきたところかと思われます。そのなかでもやはり保育士を目指したいという方にとって気になるメリットとデメリットについてまとめました。
子どもに関わる仕事を希望する方のなかでも、とくに0歳から3歳までの乳児のお世話に関心が高い場合は、保育士ならではの仕事としてやりがいを感じることができます。日々の成長を見届けることができる喜びは、実感として心に刻まれるはずです。その後、幼児期も引き続き関わるため、子どもと長期間にわたる絆が築かれる点もメリットになります。

保育園以外にもさまざまな児童福祉施設があり、認定こども園も含め、就職先の幅が広いところも魅力です。働いている保護者の子育て支援に役立つという社会貢献も実感できます。
子どもは好きなものの、乳児のサポートは大変と感じる方もいるでしょう。こういった方にとっては、サポートの大変さがデメリットです。保育園の利用時間が長く、園自体に長期の休みがない場合が多い点について、勤務時間に不満を感じる方もいます。乳幼児の命を預かることにおいて責任感のある仕事と捉えるか、重責を負担と感じるかは個人の考え方次第です。社会的にニーズの高い職業で、新たな制度の導入により環境が変わりつつあります。将来性を見越した判断も必要です。
幼児教育が目的という幼稚園教諭はメリット、デメリットについても保育士と以下のような違いがあります。
基本的に乳児はおらず幼児だけなので、年齢にふさわしい情操教育を志す方にとってはその点がやりがいとなります。子どもの在園時間が4時間程度と保育園より短いため、準備や後片付け、事務といった業務を比較的、落ち着いてできる点もメリットです。長期休暇がある場合が多く、プライベートを充実させることもできます。

仕事が忙しい保育園の保護者であれば関係性があまり深まらない可能性もありますが、幼稚園は保護者同士の結束が固い場合もあり、保護者との信頼関係を構築しやすいところも魅力です。
子どもの在園時間や預かる期間が保育園より短く、長期休暇もある場合が多いため、もっと子どもと接したいと寂しく感じる方もいます。保護者との関わりが予想以上に深く、苦手意識をもつ方にとってはデメリットです。
給料にはほとんど違いがないものの、管轄や目的、資格や免許といった根本的なところから違いがある保育士と幼稚園教諭。最終的にどちらを選ぶかについてはご自身の適性や希望が判断の根拠になります。どちらを選んでも後悔せず、快適に働き続けることができるようポイントとなる点をおさらいしておきます。

一口に子どもと関わる仕事といっても、サポートしたいのは福祉なのか教育なのかによって働きがいが変わってきます。まずはこの点を見極めることが大切です。そのうえで乳児と幼児のどちらと相性がいいのか、子どもと接する時間、勤務時間についても考慮します。

さらに保育士の資格、幼稚園教諭の免許状を実際に取得する流れや就職先のシミュレーションを行ってみることもおすすめです。どの学校に進学し、どこに勤務するのかということを考えると、保育士か幼稚園教諭かという選択肢だけでなく、保育士としてはこの学校や就職先が良い、幼稚園教諭としてはあちらの学校や就職先が良い、といった具体案が見えてくるはずです。

また認定こども園を目指して資格と免許の両方を取得する方も増加しています。新たな制度が定着するにつれ、現時点では不満が多いとされている点が改善され、デメリットがメリットに変わる可能性も十分に考えられる状況です。なるべく長期的な視点に立って、総合的に判断することが望まれます。
少子高齢化が進む現代社会においても、保育士と幼稚園教諭はどちらも需要が高い職業です。保育士不足や待機児童問題については新たな制度による改善も見込めます。2020年現在はまさに過渡期を迎えている状態です。保育と教育、子育て支援が一体となる取り組みが進む現状を踏まえると、どちらも将来性があると考えられます。

もちろんこれから保育士や幼稚園教諭になる方がリーダーシップを発揮して、デメリットとなっている点を改善するチャンスもある状況です。世界的に大変な時代だからこそ、少子化や子育てといった社会問題の最前線で働く喜びや生きがいを実感することになります。保育士と幼稚園教諭の両方について熟考し、検討する事が必要です。
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