保育園

保育士の仕事で大変なことは?やりがいと苦労するポイント

2020.05.20
保育士の仕事は小学生女子達の将来の夢ランキング上位の常連ですが、現実では潜在保育士は約76万人とされ、保育士の資格を持ちながらも稼働しない人が多い事が分かります。多くの潜在保育士を生み出し、結果、保育士不足となるこの現状はなぜ生じるのか。
その要因でもある保育士の仕事について解説します。
保育士の仕事とは共働き家庭や、一日中子どもを見ることが難しい家庭の乳児から小学校に就学するまでの幼児を、保育所で預かり保育する仕事です。一言に保育と言ってもお昼寝やトイレ、着替えのお世話といった「養護」と、散歩や絵本の読み聞かせ、食事のマナーなどの「教育」を行います。

それに加えて欠かすことのできないのが、各家庭へ園での子どもの様子を報告することや、保護者の育児相談に対するアドバイスです。
ここでは保育士の勤務の一例を紹介します。(例は同年齢保育の園のもので、時間は園によって異なります)

午前7:00〜
出勤:その日の業務と前日からの引きつぎ確認。園児の登園準備。

午前7:30〜
登園:園児や保護者との挨拶。その際に保護者からの伝達や園児の様子で健康状態等をチェック。

午前9:30〜
朝の会:出席確認や園児全員での歌や体操など。
クラス別保育:年齢に合わせ、運動や工作、お散歩や歌などを行う。

午前11:30〜
昼食準備:子どもたちに手洗いうがいの指導。お弁当の準備を行う。

正午
昼食:子どもたちと一緒にお昼を取りながら、一人ひとりの様子を確認。お箸の持ち方指導や、好き嫌いをなくせるように働きかけたり、各自の食欲にも気を配る。

午後 0:50〜
お昼のお片付け:子どもたちの片付け、食後の歯磨きやトイレの指導。

午後 1:00〜
お昼寝の時間:子どもたちを寝かしつける。その間、様子をチェックしつつ連絡帳や保育日誌の記入。

午後2:00〜
起床:子どもたちを起こし、布団の片付け。

午後 3:00〜
おやつの時間:おやつの準備と、子どもたちの手洗いうがい指導。

午後 4:00〜
帰りの会:子どもたちに帰り支度の指導。絵本の読み聞かせや歌などを歌い「さようなら」の挨拶。 

それ以降
子どもたちを保護者へ引き渡し。それぞれのお迎え時間は異なるため、お迎えがまだ来ていない子どもたちの様子に気を配りながら、お迎えに来た保護者には子どもを引き渡して連絡帳を渡し、子どもの一日の様子を報告。

午後6:00〜
教室の掃除や保育日誌の記入。翌日の準備。
前述したスケジュールを見るだけでも、勤務時間の長さや内容の多さが分かりますが、相手は未就学の子どもたちです。泣き出す子たちもいれば、喧嘩を始める子もいます。なかなかスケジュール通りに事が運ぶというわけではありません。

保育士の仕事で大変な事の代表的なものは以下6点です。それぞれについて詳しく解説します。

・子どもの保育で大変なこと
・保護者の対応で大変なこと
・行事の準備で大変なこと
・職場で大変なこと
・給料面で大変なこと
・保育士の生活面で大変なこと
まず何よりも体力勝負です。相手は元気いっぱいの子どもたち、気分や自分の興味次第で自由すぎるほどに行動し、泣き、笑い、怒ります。暑い日も寒い日も外遊びが大好きな子も多いです。肌のケアなどに気を配っている暇など、もちろん皆無です。

体調面で言えば腰痛、肩こり、筋肉痛はもはや職業病です。子どもの目線に合わせようとすればかがみ込むことも多いですし、抱っこをせがむ子がいたり、いざというときに抱えあげたりと体への負担は少なくありません。

そして保育計画通りに物事をすすめるよりも、子どもたちの安全確保が第一です。怪我や事故などがないよう、ひとりひとりにしっかりと目を配らなければなりません。

何よりも命を預かっているという責任が保育士にはあります。地震などの非常事態の際、自分ではなく子どもの命を第一に考えられるのか、この意識は勤務する中で度々、自身に問いかけることです。また、アレルギーの子どもや多少の発達障害が見られる子もいる為、特に神経を使いながら日々過ごすことは保育士の仕事では大変な事です。
保護者対応が保育士の仕事で一番大変という人も多くいます。世間で問題となっているモンスターペアレントも当然のように出現しますし、保護者は大人のため、子どものようにかわいさに救われるということは起こり得ないのです。

そして、保育園に求めすぎる保護者にも困らされます。好き嫌いが減らない、挨拶ができないといったことは、家庭でもしつけることが当然であるにも関わらず、家庭での努力一切なしに園に丸投げしようとするのです。

個人としては言い返したいところでも、園として、保育士としては言葉を選び相手を怒らせないように、なんとか家庭での協力を仰ぐといった形に持っていくしかありません。このような面では教育者というよりも接客の技術が必要で、子ども相手が体力勝負であるならば、保護者相手は精神力勝負です。

そして最近保護者が気にしてしまう事は、男性保育士の存在です。保育士という呼び名が定着した現代であっても、やはり「保母さん」のイメージで、保育は女性にと希望される保護者も少なからずいます。

同僚として男性保育士がいることは力仕事や、男性ならではのパワフルな遊び方を子どもたちにしてくれて心強い一方で、とくに女の子の母親は異性であることを気にかけ、時に嫌がられてしまうことまであります。
運動会やハロウィン、クリスマス会や卒園式など、園児にとってはワクワクするようなイベントが保育園には目白押しです。確かに楽しいし大切なイベントです。当日は保育士も楽しめるため、とても良い思い出にもなります。

ただ、そこに至るまでに欠かすことができないのがイベント準備です。一日のスケジュールを見れば分かるように、保育士の一日の仕事に気を抜く時間はありません。お昼寝の間に連絡帳を記入する際にも寝付けない子、起き出す子に気を配る片手間で仕上げなければならないのです。

行事の準備に関しては時間外勤務、家に持ち帰っての作業まで行わなければならない場合があるのが現状です。子どもたちの笑顔のため、それだけを心の支えに気力を振り絞っている保育士達は多くいます。
保育園という職場は子どもたちがメインの現場ですが、それを支えているのは保育士同士の連携です。近年では男性保育士も増えつつあるため環境は変わりつつありますが、女性が大多数の職場では、女性ならではの人間関係の問題はつきものです。派閥や上下関係が厳しい園も少なくありません。

また女性ならではですが、妊娠出産を望むと気を使う面が出てきます。同じ女性同士フォローすればいいと考える方も多いと思いますが、問題はそれだけではなく産休育休に入るタイミングです。人手もギリギリで人見知りがある子もいる中で、中途半端な時期の休職は引き継ぐ保育士にも負担がかかりますし、場合によっては保護者からクレームが来る可能性もあります。そのため保育学年の変わるタイミングを考えて、妊娠出産を意識する必要があります。

そして保育士として働いてから気づくかもしれませんが、一般の職場ではアルバイトにも当然のように保証されている休憩というものが現場には見当たりません。基本的には一日中子どもに囲まれた仕事になるため、スマホをいじりながらのんびりなどという休憩は夢のまた夢です。

法令の定めるところによれば、保育士が1人あたりで担当する子どもの人数は、0歳児は3人。1,2歳児であれば6人、3歳児になるとその数は20人、4,5歳児であれば30人にもなります。

お昼は一緒に取るのも保育のうちですし、これだけの人数を担当するとなればトイレに行くタイミングを狙うのも難しいくらいです。女性保育士ならではですが、生理の時などのトイレ事情は深刻です。
保育士の賃金が低いということは、世間での子育て問題がテーマの話題においてはよく耳にしますが、現実は残念ながらまさにその通りだというしかありません。厚生労働省の平成30年度の調査によれば保育士の平均的な給料は、私立園の場合20代前半では、月収が20.1万円、年収は287.8万円となっています。ここから、所得税や年金が引かれるため、命を預かる仕事に対する報酬としては疑問です。

さらに勤続年数が増えればそれに比例して給料が増加していくかというと、40代になっても月収24.7万円、年収が377.8万円と、他の職種と比べても収入増加率は低いと言えます。

公立の園であれば多少私立園の額よりも多くなり、勤続年数による収入増も期待できますが、自治体により金額にばらつきがあり、都心の東京都が一番給与面で優遇されています。ただ公立の保育園で働く場合、地方公務員の扱いとなるため、保育士資格を所有した上で各自治体の試験に合格しなければならず、採用は狭き門となっています。

また私立園でも、無認可保育園や小規模な保育園になるとかなり給与も低く抑えられている場合があり、保育士でしっかり稼ぐというのはなかなか困難なのが現状です。そのため派遣型の保育士等で高い時給を得るという働き方もありますが、その場合賞与がないなどのデメリットが出てきます。

もちろん役職や、勤務する園によって給料は異なってはきますが、勤務内容の割に給料が一般平均より低いというのは、多くの保育士が働く上で直面する悲しい現実になります。
保育士が仕事を離れたときに大変な事として、プライベートで保護者や園児に出くわしたときは気まずいものです。勤務する園は大抵の保育士は通いやすい場所を選びますが、そうすると当然、その地域に住む保育園児やその家族との生活圏が重なってきます。

ちょっとノーメイクで近所のスーパーやコンビニへ出かける時に限って、遭遇してしまうのです。その場合自然と、保護者対応・園児対応の顔に切り替わってしまいプライベートの時間までもがお仕事モードへと切り替わってしまいます。また、男性保育士が現場で増えつつある一方で、給与面の改善は話題になりつつも大きな成果は見られていない現状において、男性保育士の結婚もなかなか難しくなっています。

古い考え方で変わりつつあるとはいえ、やはり男性優位の考えも根強く残る中で男性側の給与が低いというのは、悲しいことに女性が思いとどまってしまう一因になってしまっています。そしてこの結婚問題、保育士の女性側にもまた違った要因で起こっています。持ち帰りの仕事が多くプライベートが少ない、職場に出会いがない、と言っているうちに婚期を逃すパターンです。

両者ともに子どもが好きだからこそできる仕事をしているのに、その仕事が原因で結婚が遠のくというのはなんとも皮肉な話です。
ここまで保育士の大変な面を解説してきましたが、もちろんその大変さを乗り越えるやりがいを見いだせるからこそ、保育士という大変な仕事を続けるモチベーションとなります。そのやりがいは保育士個人個人それぞれですが、何よりも変化の大きい時期の子どもの成長をそばで見守っていけることがその一つに挙げられます。

乳児期から園に通っている子どもなどは、歩き始め、話し始め、背が伸び、できることが一つまた一つと増えていき小学校に上がる直前までの姿を目にできるのは、保育士ならではの特権です。しかもその成長を一人の子どもだけではなく、多くのそれぞれの個性を持った子どもたちが見せてくれるのは何ものにも変えがたく感じられます。

また、子どもの成長とともに保護者も親として成長する姿を見せてくれたときなども、なんとも言えない喜びとなります。始めの頃は園に預けることに神経質になっていたり、子どもの成長速度の違いで思いつめていたような保護者が、保育士との対話や自分の子どもの成長を目にしていく中で、入園時より子育てに余裕を感じるようになったときなどは嬉しいものです。

保育園は子どもだけでなく保育士を含め、その子どもに関わる周りの人が共に成長していける場所でもあるのです。
ここからは保育士の仕事で大変なことへの対処法について、代表的な以下3点を解説します。
1.情報共有する
2.コミュニケーションを取る
3.働き方を変える

体調面や特性面で注意が必要になる子どもの情報共有は、保育の現場において非常に重要です。保育士1人の目だけでは手に負えない場面に備え、保育士全体で情報共有をしておくことで問題を未然に防ぐことができた例は数多くあります。

ただし情報を共有する際には、タイミングに注意が必要です。基本的に保育士は仕事に追われているため、本当に重要なことを手短にタイミングよく伝えることが大切です。もう一つ共有しておきたいのが、保護者関連の情報です。保護者の方は、朝の子どもの引き渡しの際忙しいため、手近な保育士に要件を伝えて去っていってしまうことはよくあります。これを担当保育士に伝えそびれたらクレームの元となるため、早めに引き継がなければなりません。

また保護者関係としては、対応に気をつけるべき保護者情報の共有はトラブル回避の死活問題です。情報共有をしっかり行い、保育士全体のストレスになりかねない保護者トラブルを未然に防ぐ体制を構築します。
コミュニケーションは保育士同士、保護者、子どもとしっかり取ることが望ましいです。
特に子ども相手は難しいのですが相手が伝えたいことを聞く努力をし、大人相手には言い分を聞き取り、しっかりこちらが伝えたいことも誤解のないように伝えることが理想です。

そうすることでお互い誤解が生じることを防ぎ、少しずつ信頼関係も育ち円滑なやり取りをすることができます。
どうしても園の方針に合わない、人間関係がうまくいかない、給料に不満があるなど、無理をしてストレスを溜め込んで健康を損なったり、肝心の子どもに優しく接する心のゆとりがなくなってしまっては意味がありません。周りの人に相談してみることはもちろん、園を変えてみることも選択肢に入れてみると、ぐっと気が楽になる場合があります。

実際、経営者も保育士も様々なため、同じ園で頑張り続けなくて良いときもあります。幸い保育士は売り手市場でもあり求人は多くあります。もう一度自分の理想や生活に合わせた園を探してみる方法もあるのです。
【保育士の仕事で大変なことは】
・子どもの保育では安全面への注意と体力勝負

【保護者対応で大変なこと】
・モンスターペアレント対策と保護者の保育園への過大要求

【行事の準備で大変なこと】
・とにかく時間がないので時間外労働や持ち帰りが発生する。

【職場で大変なこと】
・女性が多いので人間関係。
・周りに子どもが沢山なので休憩がままならない。

【給料面で大変なこと】
労働内容の割に給料は厳しい。昇給もあまり無い。

【保育士の生活面で大変なこと】
プライベートでも気が抜けない。婚期が遠のく。

【保育士の仕事のやりがい】
成長著しい子ども達の成長を間近で見守ることができる。

【保育士の仕事で大変なことへの対処法】
1.情報共有する
子どもや保護者の情報は同僚保育士と共有しトラブル回避。
2.コミュニケーションを取る
子ども、保育士同士、保護者としっかりコミュニケーションを取り信頼関係を築く。
3.働き方を変える
園にあまり合わずストレスを溜め込むようなら転園も一つの選択肢。
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